▼21-22時(馨・聡史・響)


パレードが終わりその余韻も抜けてきた俐音達は、穂鷹が帰ってくるまでの時間を土産物を見る事で潰していた。


「僕分かった。何でミッキーが毎日パレードなんてメンドイ事してんのか!あの高い所に立ってるとさ、見渡す限り人間共が自分の支配下にあるように思えてくんの。手振るだけで大歓声だよ?ネズミ天下」

「お前全然反省してないじゃないか!」


カバンを犠牲にしてまで馨の暴挙を止めた聡史は先程の説教が意味を成さなかったのだと知った。

言われてみれば、馨と一緒になってパレードを乗っ取ろうとしていたカイという青年も、往復ビンタをかまされながら笑っていたような気がする。


「ていうかミッキーはそんなブラックな事考えてないもん!みんなの笑顔のために頑張ってんだもん!」

「そうか金のためじゃなかったのか」

「夢の国で夢をぶち壊すなバカ響!」


パレード以降すっかりとここの世界観に陶酔してしまった俐音は、ミッキーが貶されるのが許せないらしい。


「違うよね、ミッキーはネズミだからお金とか要らなよね」

「そう、そうだよ壱都先輩の言う通りです!」

「後ろで糸引いてる人がいるだけで、彼でさえただの操り人形」

「うわわあぁー!!」


涙目になり始めた俐音を壱都は楽しげに見つめている。


「その位にしてやれ、泣きそうになってるだろ」


助け舟を出したのは聡史だった。


「うぇぇお父さぁーん!」

「誰が父さんだ誰がっ!」


ポロリと出た心の声のせいで怒られてしまった。
うなだれていると馨が俐音の肩を抱く。


「大丈夫だよお父さんホントはそんなに怒ってないからね、お母さんも一緒に謝ってあげるから」

「緒方先輩がお母さんとか有り得ないぃー」

「何言ってんのリンリン、僕と家族になったら毎日がビューティフルライフだよスイーツ食べ放題だよ!」

「素晴らしい日々ですね」


一変して意見を翻した俐音に聡史が溜め息を吐いた。


「そういや響は?」


気がつけば姿が見えなくなっている響にまた逃げたのかと思ったが、自分達はそこまで騒いでいない。


「ああ、どうせ何も買わないから外いるって出てったけど」


どうやら人がごった返すこの空間にいるのが苦痛だったらしい。
それと、そんな中でも他の客に遠慮などせず一所に止まって、土産と全く関係のない話をしている馨達といるのが嫌だったという理由もやはりあっただろう。


「わー見て見てこの缶のミッキー海賊の格好してるよ」

「カリブカリブ」


何処にいるのかさえ知れたら良かったのか、馨と俐音は今度こそ商品を物色し始めた。


「リンリン服も売ってるよ」

「可愛いですね」

「買ってあげようか?」


壱都が一枚のTシャツを片手にニコリと笑う。
が、俐音は恨めしげに見やった。


「それ小さくないですか」

「120サイズ」

「ずばり子ども用じゃないですかコンチクショウ」

「お前等まだやってんのか」


外で待っていたがいつまで経っても出て来ない馨達に痺れを切らした響が戻ってきた。



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