▼15-16時(俐音・穂鷹・壱都)

バズ・ライトイヤーを終えて屋外に出た穂鷹は急激に増えた光量に思わず顔を伏せた。


「あー……眩しい、涙が出そうだよ」


乾いた笑いと共に零れ出た呟きはどこか悲壮感が漂っている。


「オレってもしかして先輩の恨み買うような事しました?」


度重なる執拗な嫌がらせはそのせいとしか考えられなかった。
恐々と訊けば壱都は首を横に降る。


「そんなんじゃないよ」

「そうだよ穂鷹、先輩は腹いせで嫌がらせするような人じゃない!」


壱都を庇う俐音に、二人の結束がより固くなってしまったようで拙い発言だったと悔やまれた。
成り行きとは言え、明らかなグループの仕分けミスを恨むしかない。

うなだれる穂鷹に気づいていないのか俐音は「ただ……」と言葉を続けた。


「ただ先輩は穂鷹を生理的に受け付けないだけだ!」

「何百倍も傷つく!」


真剣な顔で言わないでほしい。
否定しようとしない壱都も意地が悪い。


「冗談にしてもせめて普通に嫌いくらいで留めておいてくれないかな」

「え、冗談……?」

「終いにはオレ人間不審になるよ!マジその辺でやめて!」


演技に見えないのが怖い。

穂鷹が言っているのは並んでいる時の事の話。

俐音は細いチェーンが何重にもなっているネックレスをしていたが弄っていたら縺れてしまったのだ。

しかも下手に引っ張ったり捻ったりしたものだから余計に複雑に絡まり。
悪戦苦闘する俐音を暫く見ていたのだが、一向にほどけそうもないそれに、穂鷹は苦笑しつつ手を差し出した。


「俐音ちゃん意外とぶきっちょだね、貸して」


ジャラリと音を立てて持ち上げられたネックレスを俐音は黙って見ていた。
彼が器用なのは疑いようもないし、自分では何時まで経ってもなんともなりそうにない。

穂鷹の長い指があっさりと絡まりを解いてゆき、もう一息で元通りになりそうだと言うところで壱都の手が伸びてきた。


「せい」


変な掛け声の後、壱都はあろう事かネックレスを手刀で落とした。


「のおあぁーっ!!」


容赦なく地面に叩き付けられた自分のアクセサリーを俐音は慌てて拾う。


「何すんですか先輩!?」

「うん」

「うん、じゃないですよ!人が折角良い所見せようとしてんのに何してくれてんすか!」

「面白くないから」

「いやいやいやネックレス落としても面白くなんないですって!」


というような反応が返ってきた時点で壱都としては満足だった。

俐音のもとに戻ってきたネックレスを見てにこりと笑う。


「また縺れちゃったね」


縺れさせたのアンタだろっ!

必死に穂鷹は言葉を飲み込む。
下手に刺激すればに何が待ち構えているか分かったものではない。

そして完全なるとばっちりにして一番の被害者の俐音は半泣きだ。


「り、俐音ちゃん大丈夫だよ、また解いてあげるからね」

「今度は俺が直すよ」


穂鷹より先に壱都が手に取った。
はっと俐音が顔を上げる。


「俺がやったんだし」

「先輩……」

「ちょー待ち、これも結局は壱都先輩が持ってくの!?てか俐音ちゃん感動するような事なんも言われてないよ、その人犯人だよ!」


しかもそのままの流れでアトラクションに乗ることになり。
今度は三人乗りだったものの、銃で敵を撃って得点を競うゲームにも拘らず1ブースに2個しか銃がついておらず、穂鷹はただ眺めているだけに終わった。



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